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ピロリ菌が引き起こす病気と治療方法、予防策について

ピロリ菌とは

ピロリ菌

ピロリ菌は、胃の中に長年住み続けている細菌です。かわいらしい名前なので、ピロリ菌という名前に聞き覚えのある方もいらっしゃると思います。テレビCMで、この名前を耳にしたかたもいらっしゃるかもしれません。正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ菌」といいます。

このピロリ菌、名前の由来をたどっていくと、その特徴がよくわかります。「ヘリコ」とは「らせん」や「旋回」という意味で、ヘリコプターのヘリコと同じ意味です。ピロリ菌は、体が細長い「らせん状」をしていて、体の片側に数本のひげ(べん毛)を持っています。このべん毛を素早く回転させて、胃粘膜表面を自由自在に動きまわることができます。「バクター」とはバクテリア(細菌)で、「ピロリ」とは胃の出口(「幽門」といいます)を指す「ピロルス」からきています。この菌が初めて見つかったのが胃の幽門部であったため、このような名前がつきました。

ピロリ菌

胃という消化器官は、食べ物を消化させるために強酸性の「胃酸」を分泌させます。従来は、この強酸の環境に細菌がいるとは考えられていませんでしたが、1980年代にピロリ菌が発見されました。ピロリ菌が強酸性下の胃の中で生育できるのは、胃の中にある尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、アンモニアで酸を中和することにより、自分の身の回りの酸を和らげているためです。

ピロリ菌がいると、胃がんや胃潰瘍になりやすいと言われますが、それはその行動にあります。ピロリ菌はべん毛を高速で回転させ、その回転力で胃の中をドリルのように進みます。その時に、胃の粘膜や壁を傷つけてしまうため、胃壁が酸の攻撃を受けやすくしてしまうのです。

潰瘍のリスクファクターとしてはストレス・たばこ・暴飲暴食などがあげられますが、そのような状態でピロリ菌に胃壁を傷つけられたら、さらに症状が悪化してしまいますね。潰瘍の治療での治りにくさや、治療後の再発もピロリ菌が大きく関与していると考えられています。

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症状

ピロリ菌感染そのものによる症状というものは、ほとんどありません。ピロリ菌に感染するとほとんどの人では慢性的な胃炎が起こりますが、胃炎そのものは症状を起こしません。ただし、以下の症状を伴うことがあります。

  • 胃潰瘍や十二指腸潰瘍ができるとおなかが痛くなる
    (特にみぞおちあたりが食後や空腹時に痛くなります)
  • 胃がんになるとお腹が痛くなる・食べるとすぐお腹がいっぱいになる・吐く・体重が減る・貧血になる

いわゆる「胃の調子が悪い」といっても必ず病気があるわけではなく、逆に「症状が出ない」といっても病気が密かに進行している場合もあり得るのです。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍、慢性胃炎のほとんどはピロリ菌が原因で起こります。胃癌のほとんども慢性胃炎から起こりますので、やはりピロリ菌が原因です。ほかにもmaltomaという胃のリンパ腫や、血小板減少性紫斑病の中にもピロリ菌が原因となっているものがあります。

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検査

胃カメラ

検査の種類のご説明の前に、ピロリ菌の検査が保険適用になるかどうかをご説明させていただきます。ピロリ菌のみの検査を行いたいという方も多くいらっしゃいますが、ピロリ菌のみの検査では保険適用となりません。
現行の保険診療のル-ルでは、初回は胃カメラ検査を行い慢性胃炎所見のある方しかピロリ検査を行うことはできません。また、検査の回数や期間についてもガイドラインに基づいた制約があります。

それでは、どのような検査方法があるのか代表的なものをご紹介いたします。ピロリ菌の検査では、胃カメラを使うものと使わないものの2種類に分ける事が出来ます。

胃カメラを使用する検査

【迅速ウレアーゼ試験】

内視鏡を使い、組織を一部取り出します。ピロリ菌の持っているウレアーゼという尿素を分解する酵素の活性を利用して調べます。

【鏡検法】

胃粘膜の組織標本に特殊な染色をしてピロリ菌を顕微鏡で直接見て探します。

【培養法】

胃粘膜を採取し、それを5~7日培養して判定します。

胃カメラを使用しない検査

【抗体検査】

人は菌に感染すると、体内に「抗体」を作り出します。ピロリ菌に感染した時にも「抗体」が作られますので、この抗体の有無を調べることで感染を測定します。

【尿素呼気試験】

容器に息を吹き込んで呼気を調べる方法です。特殊な尿素製剤である試験薬を服用し、服用前後の呼気を集めて診断します。ピロリ菌の持つウレアーゼにより、尿素が二酸化炭素とアンモニアに分解されますが、その時に発生した炭酸ガスが呼気中にどの程度含まれているかにより判定する方法です。この検査は、患者さまへの身体の負担がほとんどなく、簡単査で、かつ感度も高い検査方法です。

【抗原法】

糞便中のピロリ菌の抗原の有無を調べる方法です。この検査も身体への負担はございませんので、小児での検査も可能です。

 

当院で採用している主な検査方法は、尿素呼気試験、迅速ウレアーゼ試験、抗体検査の3種類です。上記検査は、迅速ウレアーゼ試験は当日に、その他は2~3日後には結果が判明いたします。日本人は胃がんが多いため、一度は胃カメラを行いその際に一緒に検査することをお薦めいたします。

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治療方法

ピロリ菌検査は、以下の患者様を対象として検査する場合に保険適用となります。

  • 内視鏡(胃カメラ)又、造影検査後において胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍が確定した患者さま
  • 胃MALTリンパ腫の患者さま
  • 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の患者さま
  • 早期胃がんに対する内視鏡的治療後の患者さま

ピロリ菌の治療では、3種類の薬を服用し、一週間飲むと70~80%の人が除菌できます。治療は上記疾患の患者さまを対象に、以下の流れで行います。

治療期間
【一次除菌療法】

1種類の「胃酸を抑える薬」と2種類の「抗菌薬」の合計3錠を同時に1日2回、7日間服用します。「抗菌薬」は抗生物質ですが喉の感染や呼吸器感染でもよくつかわれる抗生物質でそれほど強い副作用はありません。

【二次除菌療法】

一次除菌療法と同じ1種類の「胃酸を抑える薬」と1種類の「抗菌薬」、一次除菌療法とは別の1種類の「抗菌薬」の合計3剤を同時に1日2回、7日間服用します。

 

ピロリ菌に耐性ができていて一次除菌療法でも除菌できない場合、二次除菌療法で他の抗生物質を使用して除菌を行うことができます。

除菌ができたかを確かめるときは胃カメラでなくても尿素呼気試験でも正確に判定できます。ただし、胃潰瘍などでは潰瘍の治癒も確認する必要があるため、再度胃カメラを進める場合もあります。

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感染ルートと予防方法

感染ルート

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ピロリ菌の感染ルートはまだ解明されていませんが、感染について人体実験をした博士(イギリスのマーシャル博士)がいます。博士はピロリ菌が胃炎や胃潰瘍の原因と考え、自分でピロリ菌を飲んで病気になることを自分の体で証明しました。

ピロリ菌は幼少時いろいろなものを口に入れてしまう頃、衛生環境、特に飲み水などから入るようで、日本人では60歳以上で半分以上の人が、東南アジアで衛生環境が悪いとほとんどの人が感染してきました。幼児期に感染すると言われているのは、その時期の胃の中は酸性が弱く、ピロリ菌が生き延びやすいためです。幼児期の感染では母から子への家庭内感染が疑われていますので、大人から子供への食べ物の口移しなどには注意が必要です。

現在の日本では、約6,000万人の保菌者がいると言われています。年齢別に分析すると高齢者(団塊の世代前)の方は約80%前後の割合で感染し、若い世代の感染率は20%を切る程度です。高年齢の方の感染率が高いのは、上下水道が十分に整備されていない不衛生な環境で育ったことが原因と考えられています。上下水道などの生活インフラが整備された現代日本では、生水を飲んでピロリ菌に感染することはあまり考えられません。

予防方法

感染を予防する方法はよくわかっていません。しかし、人体実験により口から感染することは確認されていますので、親から子への食べ物の口移しには注意が必要でしょう。また、発展途上国で生活する際には非衛生的な水や食べ物に細心の注意を払い、できるだけ口にしないほうが感染のリスクは減るでしょう。今の日本の衛生環境で、大人が除菌後再感染する可能性は極めて低く、ほぼ無視できるレベルで心配することはありません。

最後に大変大切なことを2つお伝えいたします。

1つはピロリ菌を除菌すると、胃潰瘍、十二指腸潰瘍は単独での発症はほとんどなくなります。しかし、消炎鎮痛薬などで起こる胃潰瘍、十二指腸潰瘍は除菌しても完全には防げません。

ピロリ菌

2つ目はもっとも大切なことです。ピロリ菌は大きな胃がんの原因ではありますが、除菌するころにはすでにピロリ菌により慢性胃炎が起こっており、この慢性胃炎こそが胃がんの発生母体になっているのです。つまり発生母体はすでにできているのでピロリ菌を後から除菌しても胃がんの危険は減少しますが、決してゼロになりません。「ピロリ菌を除菌したから、もう胃がんの心配がない」と胃の検診をやめてしまうと大変なことになり得ますから、絶対に勘違いしないでください。除菌はあくまで胃がんのリスクを減らすだけで、除菌後も胃がんになる人はいます。除菌が成功した方でも医師と相談の上、定期的な検査を行うことが大切です。

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