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肺炎の治療方法、予防策について

肺炎とは

肺炎とは、主に細菌やウィルスなどの病気をおこす微生物(病原微生物)が肺に感染して炎症をおこす病気です。

病原微生物の多くは空気と一緒に体内に侵入してきますが、通常は人間の身体に備わっている防御機能により排除されます。しかし疲労やストレスなどで抵抗力が弱っている場合は病原微生物の感染力のほうが強くなってしまうため肺炎にかかる可能性が高くなります。

厚労省が発表している死因統計では、平成23年に肺炎が脳血管疾患を上回り第3位となりました。脳血管疾患は昭和40年台をピークに一貫して減少傾向が続いていましたが、それと反比例するように肺炎は上昇が続いています。最大の理由は高齢者の増加です。厚労省が発表した「年齢階級別にみた主な死因の構成割合(平成23年)」をみると、高齢になるにつれて肺炎で亡くなる方が増加していることがわかります。

性・年齢階級別に見た主な死因の構成割合(平成23年度)

肺炎の種類には、感染性、羅患場所、病原微生物などによっていくつかの種類に分類されます。

分類 病原菌 特徴
市中肺炎 細菌性肺炎 肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌などの一般細菌 日常生活をおくっている人に見られる肺炎です。
細菌性のものが、もっとも多い原因ですが、次いでマイコプラズマ、クラミジアなどによるものも多くみられます。
多くの場合、早めに適切な治療を行うことで改善します。
ウィルス性肺炎 インフルエンザウィルス、麻疹ウィルス、水痘ウィルスなど病原体
非定型肺炎 マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなど病原体
院内肺炎 グラム陽性菌、グラム陰性桿菌など 病院に入院して48~72時間以後に発症した肺炎です。
日和見感染(健康人には害を及ぼさない微生物 または平素無害菌によって起こる感染症)の頻度が高いものです。
嚥下(えんげ)性肺炎 口腔内常在菌(連鎖球菌、嫌気性菌、グラム陰性桿菌など) 高齢者や術後の人に多くみられます。
食物や胃内容物、口腔内常在菌を誤って飲み込んでしまうことで、肺炎を誘発する可能性が高くなります。

ここでは、肺炎の原因菌の中でも比較的多くの年代に感染する「肺炎球菌」についてご説明していきたいと思います。

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肺炎球菌とは

ウィキペディア(肺炎レンサ球菌)より引用

肺炎球菌は、その名のとおり肺炎の原因菌として最も分類度の高い細菌です。乳幼児や高齢者の場合には、中耳炎や副鼻腔炎・髄膜炎・敗血症などの原因にもなります。

また、その形態的特徴から肺炎双球菌とも呼ばれますが、電子顕微鏡でそのようすを確認することができます。

肺炎球菌は菌体の外側に莢膜(きょうまく)というとても固い殻をもっています。ちょうど、殻つきのピーナツをイメージしていただくと分かり易いと思います。

この莢膜は、からだを細菌から守ろうとはたらく白血球による攻撃に強い抵抗力を示し、病原性を強く発揮する主たる原因となっています。

以前は、ペニシリンなどの抗生物質での治療が効果的でしたが、最近は薬剤に耐性を持つタイプの肺炎球菌が増加しており治療が難しくなっています。

このように、発症するととても怖い細菌ですが、この菌は健康な人の鼻やのど・気道に常在菌として存在しているものでみなさんが誰でも持っている菌なのです。

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症状

症状

肺炎球菌は、先にも述べたように誰でも持っている菌なのですが、免疫力が低下したとき(例えば風邪をひいて粘膜の抵抗力が落ちたときなど)に発症します。

耳で感染症をおこすと「中耳炎」に、肺に入りこむと「肺炎」に、血液の中に入りこむと「敗血症」に、脳や脊髄を覆っている髄膜の中に入りこむと「細菌性髄 膜炎」を発症します。

これらの病気は、他の細菌やウイルスが原因で起こることもありますが、敗血症で80%、肺炎で30%、細菌性髄膜炎で 20~30%、細菌性中耳炎で30%が肺炎球菌が原因と言われています。

また、小さな子どもは肺炎球菌に対する抵抗力をもっていないので、比較的簡単に肺炎球菌に感染してしまいます。

肺炎球菌は、いったん発症すると、その莢膜の特性から強い病原性を発揮するため死亡や障害を残す割合が非常に高くなります。

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検査方法

肺炎球菌の検査

肺炎は症状(発熱・喀痰・咳・胸痛・呼吸困難など)や画像所見(レントゲン・CT検査)などから臨床的に診断されています。肺炎が考えられた場合、どのくらいの重症度なのか、また、原因微生物は何かを知るために検査を行います。

重症度は、下記のようなさまざまな情報ともとに患者さまの生命予後という観点から判断します。
  • 血液検査(WBC・CRP・BUNなど)
  • 年齢/脱水/血圧/血液ガス所見/意識レベルなど

検査の種類

検査課程
原因微生物の検査の種類は、以下のものがあります。
  • 「培養検査」 ・・・ 結果がわかるまで数日かかります
  • 「喀痰グラム染色」「尿中抗原検査」 ・・・ 迅速に診断できます
【培養検査】

喀痰・尿・髄液・血液などを材料にしてふ卵器という人間の体温と同じくらいの温度のお部屋の中で微生物を発育させます。発育してきた微生物の特徴・種類を確認し、その微生物に効くお薬(抗菌薬)はどれなのかを調べます(原因微生物の確定診断)。
結果がわかるまで4~7日程度かかるため、その間治療を始められないと患者さまの容態は改善されず困ってしまいます。

【喀痰グラム染色】

肺炎球菌はグラム陽性菌に分類されるため、喀痰中に肺炎球菌が存在しているかどうか染色液(グラム染色)で染めて顕微鏡で観察します。菌がいると染色液が紫色に変化します。
しかし、喀痰の品質が良質な事、観察にあたって一定レベルのグラム染色標本作成の手技と鏡検の熟練を要します。

【尿中抗原検査】

尿中の肺炎球菌莢膜多糖抗原を検出するキットを使用し肺炎球菌感染の有無を調べます。尿を材料とするため採取が簡単であり、喀痰採取が困難な患者さまでも肺炎球菌の検出が可能です。また、抗菌薬投与の影響を受けにくいため、お薬を服用していても検出可能です。
原因微生物判明には数日を要することが多いので、最近は確定診断を待たずに、臨床症状、経過、頻度、喀痰グラム染色や尿中抗原検査から原因微生物の推定をし、治療を開始することもあります(エンピリック治療)。

肺炎球菌検査キット

肺炎球菌検査キット

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治療方法

ペニシリン系、セフェム系の抗生物質が反応します。しかし、最近は抗生物質が効かない肺炎球菌が非常に増えていて、分離される菌の約半分が抗生物質の効きにくい菌と言われています。つまり抗生物質でも肺炎が治らない危険性が高いのです。

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予防方法

予防注射

抗生物質に耐性を持つような肺炎球菌にも有効な方法として、ワクチン投与があります。

このワクチンは次のような方はぜひ接種してください。
  • 65歳以上の方
  • 2~64歳でも慢性的に心臓、肺、肝臓に病気を持っている方
  • 糖尿病の方

予防接種を投与することによって、肺炎になる確率、肺炎での入院率、肺炎になってかかる医療費などを減らすというデータもありますので、積極的にうけるようにしてください。

現在当院では肺炎球菌ワクチンは予約制としております。インフルエンザとは違って、一度注射すると5年間有効です。以前は5年経った後の再接種が認められていませんでしたが、2009年から再接種が可能となっています。接種から5年以上経過している方は再接種をお勧めします。

この菌は常在菌であり、だれでも持っているものです。体の免疫力が低下したときに発症することが多いため、健康管理・体調管理が重要になります。うがい・手洗い・適度な運動や栄養バランスの整った食事を摂ることで病気に負けないからだを作ることはもちろん、肺炎球菌ワクチンでより最近に負けない身体を作りましょう。

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