目の中の「水晶体(すいしょうたい)」(カメラのレンズに相当する部分)が、様々な原因ですりガラスのように濁ってしまう病気です。
原因として、最も多いのが加齢による「加齢性白内障」です。発症は45歳以上が多く、進行には個人差がありますが、年齢を重ねるにつれて割合が増えます。
また糖尿病やアトピー性皮膚炎などの全身疾患に伴う白内障は、進行が早く、若い人でも起こります。
白内障は、世界的にみると未だに失明原因の第1位となっています。
主な症状は、「かすみ」「まぶしい」「二重三重に見える」等で、眼鏡では矯正できません。
眼鏡を調整しても見えにくさが変わらない場合は、白内障が疑われますので、眼科医にご相談ください。
水晶体はタンパク質と水分から構成され、約直径9mm、厚さ4mmの凸レンズの形をしており、周りにある糸状のチン小帯によって支えられています。
一番外側は「水晶体(すいしょうたい)嚢(のう)」というセロファンのような薄い透明な膜につつまれています。
この膜の前側を「前嚢」、後側を「後嚢」といいます。
水晶体嚢の中は透明な組織で、周辺部のゼリー状で柔らかい「皮質」と中心部に「核」があります。
この「核」は25歳頃から徐々に固くなり、調節がきかなくなることで、「老眼」に繋がっていきます。
正常な視界 白内障になると…全体がかすんだ感じに
「緑内障(りょくないしょう)」は、水晶体が緑色に濁るわけではなく、目の奥の視神経が障害され、視野が欠ける病気です。白内障と名前はよく似ていますが、まったく違う病気です。
白内障は、日常生活に支障がない程度であれば、点眼薬等により進行を遅らせますが、進行を完全に止めることはできません。
また、いったん生じた濁りは進行することはあっても、元に戻ることはありません。
白内障が進行して、日常生活に不自由を感じるようであれば、手術を行います。
術前検査では、目の検査と全身検査(採血・心電図・胸部レントゲンやCT)があります。
胸部レントゲンやCT検査は新型コロナウィルス感染対策のため、手術当日に撮影します。
検査 | 視力 | どこまで見えるか検査します |
屈折 | 遠視・近視・乱視の度数を測定します | |
精密眼圧 | 目の内圧、硬さを測定します | |
角膜曲率 | 目の表面(角膜)のカーブを測定します | |
眼軸長 | 目の長さ、奥行きを測定します 眼内レンズの度数を決めるための検査です |
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角膜内皮細胞数 | 目の表面(角膜)の細胞の数を測定します 角膜の一番後面にある内皮細胞は角膜を透明に保つ役割をしており、年齢とともに少しずつ減少していき、再生されません 白内障手術では約5~10%減少するといわれています そのため十分な数があるか事前に調べる必要性があります |
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診察 | 細隙灯顕微鏡検査 | 水晶体の濁りの状態を診ます |
眼底検査 | 目の奥(網膜)の状態を診ます |
一般的には、濁った水晶体を超音波で砕いて取り出す「超音波乳化吸引術」を行ってから、人工レンズを入れる「人工レンズ挿入術」を行います。麻酔は、点眼等の局所麻酔で行います。
・超音波乳化吸引術
水晶体の前嚢を円形に切開した後、濁った水晶体を超音波で砕きながら取り除く方法です。
(水晶体嚢外摘出術…白内障が進行して核が非常に固くなっている場合、核を丸ごと取り出す方法です。)
・人工レンズ挿入術
濁りを取って残った水晶体嚢の中に人工レンズを入れる方法です。
(人工レンズ縫着術・強膜内固定術…水晶体嚢や周りのチン小帯が傷んでいる場合、人工レンズを直接縫い付けて眼内に固定する方法です。)
手術直後は、充血や異物感があることがありますが、数日から1~2週間程度で治まります。
手術翌日から1~3ヶ月は、炎症を抑えたり感染防止のため、数種類の点眼薬を使用します。
術後1週間程は、洗顔・洗髪が出来ません。目を押したりこすったりしないようにしてください。
術後1~2ヶ月程で眼内レンズの位置が安定してくるため、必要に応じて眼鏡を作ります。
白内障術後、基本的に人工レンズを取り替える必要はありませんが、術後数ヶ月~数年経過して、また「目がかすむ」「まぶしくなる」ことがあります。
「後発白内障」と言われるもので、手術の際に残した水晶体の後嚢が濁ってくるために起こります。
手術の必要はなく、レーザー治療で濁りを取ることが出来ます。